J1清水が大榎監督の辞任を発表した。
昨シーズン途中にゴトビ前監督の辞任を受け、
急きょ就任してからちょうど1年、
思うような結果を残せないまま、監督の職を退いた。
後任は、田坂ヘッドコーチが監督代行を務める。
監督交代のタイミングとしては、
最後のタイミングだったと思う。
2週間の中断期間の前だったこと、
残り12試合で次のタイミングでは遅いこと、
加入したチョン・テセや、
新たに加わる角田とのフィットを考えると、
新体制にするには、ここしかないタイミングだった。
しかも、これは結果論だけど、
1か月前に就任した田坂コーチに、
チームの問題点を把握し、
改善する策を考えるための、十分な時間を与えることができた。
会社で、辞める1か月前に辞表を提出して、
次の担当者に仕事を引き継ぐように、
図ってか図らずか、大榎監督から田坂監督代行へ、
きれいに引継ぎが完了した形になった。
チーム状況を把握したうえでの交代は、
ゴトビ前監督から大榎監督への転換よりも、
遥かにスムーズで、改善が期待できるものだと思う。
大榎監督にとって、この1年間の仕事は、
相当難しいものだったと思う。
昨シーズン途中、チームが結果も内容も良くない中、
ゴトビ前監督の解任が決まり、急きょ監督を任された。
前監督とは考え方がまったく違う中で、
チーム状況も把握していないまま、
Jリーグ指導経験のない監督は、結果を求められた。
選手は体力的にも大榎監督が求めるものとは程遠く、
スローインさえ、まともにできていない状態だったという。
なんとかJ1残留を果たし、迎えた今シーズンも、
けがで最終ラインのメンバーが続々と離脱し、
フォーメーションの変更を余儀なくされた。
新加入選手の獲得も遅れ、フィットするのに時間がかかった。
悪い条件が、たくさん重なってはいた。
とはいえ、そこを立て直すのが監督の力の見せどころでもあって、
経験ある監督なら、もっと順位を上げられたかもしれない。
大榎監督は、経験が浅かった。
最後まで、守備の立て直しはできなかったし、
最後の数試合は、ボールが回らなくなり、
勝つサッカーも、大榎監督がやりたいサッカーも、
どちらもできなくなっていた。
そして守備の仕方は、最後まで選手に浸透しなかった。
浸透させられなかったという方が正しいかもしれない。
選手が自分で考えることを求めるあまり、
選手にとっては「どうすればいいか分からない」ことも多く、
ピッチ上で力を発揮しきれない状況が続いた気もする。
ゴトビ前監督が理想とするサッカーには、
1対1で勝負できる、圧倒的な「個の能力」が必要で、
それを表現できるだけの戦力が足りなかった。
大榎監督が理想とするサッカーには、
あらゆる状況に自分で判断できる「経験」が必要で、
若手主体のチームでは、かなり難しかった。
1か月前の御殿場キャンプで加わった田坂コーチは、
大榎監督がおよそ1年見てきたチームについて、
ディフェンス面の問題点を指摘した。
それは1年前、大榎監督が就任したときに、
守備の基本ができていないことを指摘してから、
思うように改善できなかったことを意味している。
監督の交代は、必然だったと思う。
そして、田坂新体制がスタートする。
選手がケガから続々と復帰し、
テセ・角田という核となれる選手も獲得。
残留争いに勝てるだけの戦力は整った。
チームの問題点も把握している。
残り12試合に向け、田坂監督代行は言った。
「自分のやるサッカーというよりは、
エスパルスが勝つサッカーを展開する」
今、極上の料理を求めてはいない。
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シンプルな料理を提供してもらえればと。