2015 J1 2nd第14節 J2降格決定

J1 2ndステージ第14節、
清水はホームで仙台と対戦し、0-1で敗れた。

そのあと行われた試合の結果によって、
クラブ史上初のJ2降格が決定した。

勝ち点を失い、自信を失い、
戦い方を見失ったクラブは、
踏ん張ることすらできずに落ちた。

この試合も、ここ数試合と同じで、
ボールを蹴ってから反応する。
ボールが飛んできてから反応するという戦い。

戦術浸透度、意思疎通、相互理解、
そういったものが見えてこない。
だから試合の中で興奮も、悔しさもなくて、
ただただ虚しさだけが残る試合ばかり。

選手の甘さが成長を阻んで、
それをなかなか改善できなかったのもありそうだけど、
それは要素のひとつでしかなくて、
能力ある選手も、力を発揮しきれていない現状がある。

メディアが批判を始めているように、
クラブの問題が大きいと、僕も思う。

残留争いをしたここ2シーズンの話に限ると、
迷走している様子が分かりやすい。

ここから結果論として、書きます。

1年半前、ゴトビ監督のサッカーは、
それぞれのポジションで、1対1で仕掛けることが多く、
選手の個の能力で相手を上回る必要があった。

2014年シーズンの頭、長沢がケガする前までは、
その戦い方がハマり、勝ちを重ねることができた。

ところが長沢を欠き、個を生かす武器を失った結果、
潤沢な資金があるわけではない中、戦力を補強できず、
サイドが孤立し、監督がやりたいサッカーは表現できず、
退屈な試合になることが増えた。

そこでシーズン途中に監督が交代。
就任した大榎監督が掲げたサッカーは、
ゴトビ監督とはまったく違う、
豊富な運動量で選手が流動的に動き、
自由な発想で攻撃を展開する、
清水がステージ優勝したときに近いスタイルだった。

身長の低い選手が多く、テクニックが優れた選手が多い清水で、
掲げたサッカーは確かに合いそうな雰囲気で、
それまでの閉塞感のあるサッカーからの反動もあり、
方向性としては間違っていないと思った。

でも、ガラッと変わったサッカーのスタイルに、
選手たちは適応できず、監督も適応させられず、
ただただ時間が過ぎていった。

しかも、今シーズンの頭に加入した外国人選手が、
足元よりも運動量や高さに特徴があるデュークと、
それほど動かず決定的な仕事をするウタカの2人。

前線からの豊富な運動量でプレッシャーをかけて、
正確なテクニックで相手を崩そうとするスタイルには、
明らかに合わず、ずっと攻撃はかみ合わなかった。

大榎監督も理想と現実の間で混迷し、
攻撃のスタイルも、守備のスタイルも見えない中、
チームの低迷で、2シーズン連続の監督交代劇が起こる。

新たな監督は、その1か月ほど前からコーチに加わり、
長谷川監督のもとでもコーチをしていた田坂監督。
チーム状況を知り、大榎監督のサッカーからの
継続性を考えたうえでも、適任かと思われた。

ところがまた、サッカーがガラッと変わってしまう。

田坂監督は、テクニックと流動性で崩すサッカーから、
フィジカル重視のサッカーへと転換を図る。

確かにフィジカルの弱さから、
ボールを失う回数が多く、試合のリズムは悪かった。
それに、残留争いが佳境に入ると、
普段のサッカーができなくなるもので、
フィジカルで勝つことが重要になりそうだった。

クラブの状況の変化もあったはずで、
今シーズン就任した社長のもと、
クラブが目指す方向は「育成型」から
育成は重視しつつ「ビッグクラブ型」へと変わった。

営業力が強化されたことでスポンサーを多く獲得し、
その資金で、これまでの弱点だったフィジカルの強い、
チョンテセと角田の獲得に成功した。

これで戦力はアップしたはずが、
シーズン途中のトレーニング期間がない中で、
サッカーは継続させるべきところを、
フィジカルの強い選手の特徴を生かした結果、
完全にスタイルの違うサッカーを始めてしまった。

選手たちは、付け焼き刃の戦い方でピッチに立ち、
個の能力で点をとるしかなくなった。

プレーの精度が落ちていたり、判断が遅れるのも、
残留争いのプレッシャーのせいではなくて、
自分たちのスタイルがなくて、自信がないから、
どうすべきか焦り、プレッシャーがプレーに影響したんだと思う。

迷走の結果、清水はスタイルをなくしていた。

まとめると、個で勝負する戦術のゴトビ監督のもと、
個で他のクラブに劣る戦力で戦わざるを得なかった。

パスサッカーと運動量を求める大榎監督のもと、
テクニックが個性ではないデュークと、
運動量の少ないウタカを補強した。

田坂監督就任のころには、
フィジカルの強いテセと角田が補強されたことで、
戦術はフィジカルが重視されるようになり、
これまでと出場する選手がガラッと変わった。

その結果、今の「闘う」というシンプルな考え方は、
とても重要で、間違ってはいないけれど、
「闘うだけ」で、その先の「戦い方」がなくなっていた。

傷を塞ぐだけの応急処置を繰り返した結果、
その治療法は効果的とはいえず、
ついに治療不可能の状態になっていた。

来シーズンは、クラブそのものの立て直しというか、
もはや「建て直し」といえるほどの構築が必要で、
そんな長期的に取り組むべき課題と、
1シーズンでのJ1復帰という、
短期的な課題の2つに取り組まなければならない。

J2降格でも、資金力はそこそこあるはずだから、
戦力もある程度保てるとは思うけれど、
それが結果に直結するとは限らないことは、
これまでのJ2の歴史が証明している。

清水はどんなクラブになっていくのか、
どんな戦術で戦っていくのか、
来シーズンはキャンプ前の時点で固まって、
しっかりとしたビジョンで進めてほしい。

ちなみにゴトビ監督時代から、サイドバックがいない、
身長の低い選手が多すぎるといった、
いびつなチーム編成が、すでにおかしかった。
明らかに多すぎる保有選手を、
正常なクラブの状態へ戻していく必要もある。

やるべきことは、たくさんあるけれど、
すべてを整理した状態で、来シーズンを迎えてほしい。

清水のサッカーとは、静岡のサッカーとは、
言ってしまえば「強いサッカー」だと思う。

現状でいいと思えば、成り下がってしまうはずで、
時代遅れのプライドでも、捨てちゃいけないと思う。

まあ、強くても弱くても、応援しちゃうわけだけど。

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