2018W杯ロシア大会 グループH第3戦 270分で勝ち取った決勝T進出

2018ワールドカップロシア大会・グループH
日本は第3戦でポーランドと対戦し、0-1で敗れた。

先発を6人入れ替えて臨んだ日本は、
前半から覇気のないポーランドに対して、
攻め込むシーンがあるものの得点を奪えず。
逆に後半、セットプレーから失点。

しかし同時間帯に行われている
セネガル×コロンビアの経過によって、
0-1のまま試合を締めれば
決勝トーナメント進出が決まることから、
残り10分ほどはボール回しに終始。

それ以降、どちらの試合も得点が動くことなく、
セネガルと勝ち点、得失点差、得点数も並んで、
フェアプレーポイント(レッド・イエローカードの数)の差で
決勝トーナメント進出を果たした。

西野監督は、2つの賭けに出た。

1つは先発を6人入れ替えて臨んだこと。
この采配は、この試合に負けたことを考えるとミスで、
決勝トーナメント進出できたことを考えると、正しかった。

入れ替えたことで、日本の選手間の距離が悪く、
パスの出しどころが少なく、
動きがかなり悪かったポーランド相手なのに、
チャンスをうまく作れずにいた。

精神的にどこか落ち着きがない選手も多く、
決定的な場面でフリーの選手にボールを出せなかったり、
普通に回せるはずのパスがズレたり、
なんでもないボールを自陣ゴールラインにクリアして、
相手コーナーキックにしたりと、いっぱいいっぱいな様子があった。

即席チームだから、選手が変わればこうなるわけで、
改めて前の2試合でスタメンだった11人が、
絶妙なバランスのうえで上手くいっていたことが分かった。

ただこれで次の試合、ケガや疲労の問題がなければ、
過去2試合のメンバーで戦うはずで、
6人を休ませられたのは大きい。

次は中3日の試合になる中、
この賭けに勝ったリターンは、大きいと思う。

もう1つの賭けは、試合終盤の約10分間のこと。

この試合、日本もセネガルも同じスコアで敗れれば、
日本がフェアプレーポイント差で上回り、
決勝トーナメント進出が決まることが分かっていた。

そんな中、日本が0-1でリードされて迎えた終盤、
同時刻キックオフのセネガルも失点し、0-1になった。
そこで日本は、0-1で負けているにもかかわらず、
失点のリスクをなくすため、自陣でパスを回し続け、
日本は0-1のまま負ける決断をした。
セネガルが0-1のままで終わることに賭けた。

そうして、セネガルも0-1で敗れ、
日本は決勝トーナメントに進出、賭けに勝った。

これ試合中は、ものすごいギャンブルだと思って、
ドキドキしながら見ていたけれど、
冷静に考えると、勝つ確率の高い賭けをやっただけだと分かった。

そもそも80分以上戦って1点しか生まれていない試合で、
得点する確率はそこまで高くない。
だから単純に、得点する確率と、得点しない確率を比べれば、
得点しない確率の方が高い。
つまり、日本がポーランドから得点する確率よりも、
セネガルがコロンビアから得点できない確率の方が高い。

それに試合内容も、日本セネガルともに低調だった。
セネガルには、得点の気配がそれほどなく、
これは日本代表スタッフがチェックしているはず。
セネガルが得点できない雰囲気だから、
セネガルがそのまま敗れると踏めたんだと思う。

つまり日本は、サイコロの偶数が出るか奇数が出るかの
丁半博打じゃなくて、
サイコロの1が出るか、1以外が出るかというレベルの
勝てる博打をやっただけだったと思う。

そして戦い方にブーイングや批判が出たことについて。

試合終盤、負けているのに、
点を取りにいかずボールを回すだけという
戦い方に、ブーイングや批判が出るのは仕方ない。

ニュートラルな観客は面白い試合を見たいし、
“負けにいく戦い方”は褒められたものじゃない。

でもこれは、1試合90分の戦いでありながら、
グループステージ3試合270分の戦いでもある。

勝っている状態でパスを回すことは問題ないわけで、
90分では負けているけれど、270分で勝ち点4をとり、
他会場のセネガルを上回っている状態は“勝っている”といえる。
“逃げ切るために”パスを回し続けると考えれば、
まったく問題ない行動なんじゃないかと思う。

楽しい試合じゃないけれど、
W杯の決勝トーナメント進出がかかる試合で、
これもワールドカップなんじゃないかと思う。

そして、日本が負ける戦略をとったことで、
いろんな議論が出て、いいと思う。

そうやってスポーツの見方が広がっていくし、
サッカーにはこういう試合もあるということを、
普段サッカーを見ない人たちに見てもらえたことも、
良かったんじゃないかと思う。

さあ、次はGグループ1位、優勝候補のベルギー戦。

すでに決勝トーナメント進出を決めていたベルギーは、
同じ日の試合で9人入れ替える
ほぼターンオーバーで1位突破し、
万全の主力組が、中3日の日本戦に出てくる。

対する日本も、6人を先発から入れ替え、
最後の10分ほどは攻めずに休んだことで、
コンディション面では、人数ほどの違いはない。

ベルギー戦は、真っ向勝負。

ポーランド戦の反省は、負けに行ったことじゃなく、
全体の距離感が悪かったこと。
今日のレベルの試合をしたら、勝てない。

でも第1戦・第2戦のメンバーが、
その2戦と同じように自信を持って戦い、
全体をコンパクトに保てれば、チャンスはあると思う。

そして選手が「ポーランド戦の分も…」とか変に気負わず、
これまで通り戦ってほしいと思う。

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