J1最終節、清水はアウェイで
ガンバ大阪と対戦し、2-0で勝利した。
18位で迎え、16位の可能性もある最終節で、
清水のスタメンは前線に19歳の川本、
センターバックにケガもあり引退の吉本など、
外国人選手はエウシーニョのみで、
降格のないシーズンらしいメンバー起用。
それに選手がみごと応え、今シーズン積み上げてきた
つなぐサッカーと、平岡監督が整えた全体の守備で、
2-0という今シーズン初めてのスコアで勝利。
順位も例年なら自動降格圏を脱し、
プレーオフにまわる16位でシーズンを終えた。
2点はガンバディフェンス陣が、
棒立ちだったわけだけど、
それを差し引いても、今いるメンバーで、
最後の試合は戦えていたんじゃないかと思う。
特に、この日が現役ラストゲームの吉本は、
的確な読みと、たぶん統率力もあって、
ディフェンスを引き締めていた。
両ひざ合わせて10度の手術をし、引退コメントで
「毎日練習を休まず全力でプレーしてチームの見本となることと、
自分自身が納得するプレーをすることが来年以降の自分には難しい」
と記した吉本は、全力でチームの見本になるプレーをし、
最後の試合を終えたように映った。感動した。
そしてこの精神を、来シーズンの選手たちが持ち、
発揮し続けることができたら、
チームはこんな順位にいないだろうなと思う。
…という願いを持って数年。
今シーズンも、うまくいかなかった。
「RE-FRAME」を掲げ、
クラモフスキー監督新体制でスタートしたシーズンは、
主導権を握る攻撃的なサッカーを標ぼうし、
新たなスタイルの構築を進めた。
理想を追い求め、開幕から魅力的なサッカーを展開。
昨シーズンまでの「偶然性」に任せた攻撃ではなく、
意図が見える攻撃は面白く、楽しかった。
しかし相手に対応されるなどうまくいかない試合は、
昨シーズンと同じ偶然性に頼るサッカーで、
攻撃もつなぎもボール奪取も何もできなくなり、
成す術なく敗れる試合が増えた。
平岡監督が就任してからは、
守備の決まり事を作るなどして、
再びボールの奪取も保持も増えたけど、
やはり悪いときの清水に戻るときが結構あった。
結果、1シーズンという時間をかけて行った
「RE-FRAME」はまだ、枠としては脆く、
しっかりとした清水のサッカーは築けなかった。
問題は、指導者による部分もあるだろうけど、
監督がどれだけ入れ替わっても、
ここ数年うまくいっていないわけで、
選手やクラブに流れている空気にも問題がありそう。
それこそ吉本のような姿勢が最低限必要で、
今年1年で契約満了になった金井が指摘している
「選手の大人しさ」「向上心の足りなさ」は、
選手たちが絶対に変えていかないといけない部分。
例えばお互いが何を求めて、どうしたいのか、
そうしたコミュニケーションが少なければ、
なかなか連係面が構築できないし、
試合中にうまくいかないときや、
相手が想定外の動きをしてきた場合などに、
対応できないまま、ひたすら耐えるしかなくなる。
練習に向上心全開で臨むとか、
練習でも試合でも声を出すとか、
そういった基本の部分が改善されなければ、
成長も、安定も、望めない。
仲が良くてまとまっているのと、
戦う集団としてまとまっているのは意味が違う。
来シーズンは監督・戦力ともに、
大きな変化があるようだけど、
過去のインタビュー内容などから推測すると、
既存の選手たちが大きく変わることが重要そう。
今シーズンうまくいっているときのサッカーは、
昨シーズンまでよりも面白かったわけで、
スタジアムで観たくなるサッカーでもあって、
目指す方向性は変わらなくていいと思う。
選手たちが取り組む姿勢を変え、
監督が戦い方をさらに整理していくことで、
今シーズンよりも水深が深い降格圏で、
溺れ続けることはなくなると思う。
来シーズンこそは。
そのあとに「残留争いをしない」ではなくて、
「優勝争いをする」という言葉が続くようなクラブに、
いつかの清水のように、戻ってほしいと思う。